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2022年5月 1日 (日)

one day (1054) 父のカメラ

1078

 

写真のカメラは40年余り前、私の父が月賦で買ったものである。

アサヒペンタックスのマニュアル一眼レフカメラ。

我が家の歴史を記録してきたカメラである。

 

私が実家で暮らしていたころ、

幼少期の妹と弟のポートレートが居間に飾ってあった。

砂浜で遊ぶ妹の姿。

近くの山の展望台でピースをする弟の姿。

六切ほどのサイズに伸ばし、額装されて、

その後の家族の成長を見守った。

当時、写真のことは全くわからなかったが、

子供ながらに良い写真だと思っていた。

 

父は職歴のほとんどをホテル業で過ごした。

不規則な勤務体系で、盆暮れ正月も家を空けた。

そのため私は家族旅行の経験も無く、

家族5人揃って食事を摂ることも稀だった。

 

私たち子供たちの運動会では、専ら母親が写真を撮った。

素人には使いにくい父の一眼レフに、

彼女はいつも文句を言っていた。

 

父は運動会の他、子ども達それぞれの

部活動の試合を観る機会も少なかった。

私の高校3年間での野球部での活動を観たこともないだろう。

妹や弟は全国レベルのアスリートだったが、

その姿もあまり観たことがないだろう。

 

そんな暮らしのなか、子ども達とタイミングが合う時間は

貴重だっただろうし、出来れば本格的なカメラで

その時間を遺したかったのだろう。

 

その父の父、私の祖父は若い頃に写真に熱中していた。

暗室作業もこなし、祖父の古いアルバムには

自分で焼き付けたであろう写真が数多く並ぶ。

 

私が30歳に手が届くころ、写真の世界に進むと話したところ、

祖父はあまりいい顔をしなかった。

それまで安定した仕事に就いていたし、私は長男だったので、

それならば帰郷して教師にでもなって欲しかったのかもしれない。

加えて芸事は厳しく、泡沫であることも解っていたのだろう。

 

そんな祖父の趣味は絵画だった。

私も野球の他、絵を描くのがとても好きで、

描いては祖父に披露していた。

 

祖父の描く絵は、独特の寂寥感に包まれていた。

祖父は幼くして父親を亡くし、

20代のときに兄と妹を病で亡くしている。

いつも笑顔の絶えない祖父だったが、

その絵には祖父の労苦や寂寞が見て取れた。

 

そんな父、祖父の影響をいくらか受けたであろう私は、

28の歳で写真を始めた。

写真や絵に想いや記憶を託すという彼等の所作は、

私が、私なりの方法で受け継いでいる。

父がカメラを、祖父が絵筆を持ったことも、

おそらくはそれ以前の家族の歴史に因るものだっただろう。

 

想い半ばで若くして亡くなった祖先が少なくないなか、

私は最大限誠実に生き、誠実に写真を撮りたいと思っている。

人間を、世界を真正面から受け止め、

正面突破してゆきたい。

そんなことも、態度やふるまいも、

写真を通じて正しく伝えてゆきたいと思っている。

 

 

 

 

 

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